敬愛するエーリッヒ・ケストナーの名作「飛ぶ教室」より名前を拝借。Das fliegende Blog 、略して「飛ぶログ(?)」。
成田けいの他愛もない日常をぽつりぽつりと綴ってみます。記事の内容と掲載日時は必ずしも、というかほとんど合致しませんので、ご了承くださいませ。
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電話の案内のとおり、しばらく国道を進むとその宿は確かに現れた。そう、実はあの牧場はまだまだ手前だったらしい。
「しばらく行くと黄色い旗がいっぱい立っている橋があります。そのすぐ横ですよ」
宿のおじさんの言葉だけを頼りに進む。と、まず橋、次にたくさんの旗、その脇に建物が見えた。これだ!
二階建てのログハウス、窓からは明るい光が放たれている。宿の名は「モシリバ」。
着いた…。ホッとしながら近づくと、逆光の中こちらに歩いてくる人影がある。宿のおじさん=オーナーがわざわざ出迎えてくれたのだ。
時刻は8時を回っている。こんな時間なのに笑顔で歓迎してくれて、ここでも北海道人の大きさを感じた。
「今日は(あなたたちと)同じような方がたくさんいますよ」
見ると、自転車が5台ほど停まっている。なるほど、こりゃにぎやかそうだ。
中に入ると、今度は宿の奥さんが笑顔で迎えてくれた。バンダナをしていて、失礼ながら白髪の髪にそれが似合ってかわいらしい。
「寒かったでしょう。先にお風呂を」
こんなに遅くなったのに、いやがられるどころかこの優しい言葉。じんわりきます。
ということで、さっそくあったまることに。
お風呂は共同で小さいのだけど、湯船に入ってびっくり!お湯の温度がドンピシャちょうどいいのです。到着時間が分単位でわかってたんじゃないかってくらい絶妙な湯加減で、これ以上熱くてもだめ、冷めてもだめ。寒風に冷え切った体をぐんぐん温めてくれる、それでもずっと入っていられるような…。「この宿すごいなー…」
風呂のあとには、夕食の感動が待ってました。
夕食は「カラフトマスのちゃんちゃん焼き」。なんとカラフトマスがまるまる一匹切り身でいただけるのですよ!そのでかいこと!写真を取り忘れたことが無念。
大きなホットプレートにマスを載せ、その周りに野菜を敷き詰め、上から特製のタレをかける。ジュジューといい音が!他にオーナーが釣った魚や、自家栽培のお野菜など、北海道の美味満載。腹ペコだった私は天国のような食事を味わった。
隣のテーブルには5人の男女がいて、とうに食事を終え楽しく談笑していた。どうやらさきほどの自転車は彼女達のもののようだ。後で聞いたところスポーツクラブで知り合った仲間とのこと。30~50才くらいに見えたけど、普段はMTBで山を走ったり、トライアスロンの選手だったりという、とてもパワフルで明るい人たちだった。
尋ねられ「自転車で来た」というと、旅の話に花が咲いた。
彼女達は、私がこれから行く方向から来たようで、「○○町に熊が出たらしい」とか「知床峠はとてもつらかった」とか「空輸は国内線ならまず大丈夫」とか、いろいろアドバイスを聞かせてもらった。すぐ横のラウンジにはバイクで旅しているお兄さんもいて、ときどき彼を巻き込みながら(お兄さんはシャイなのか口数が少なかったけど)、楽しくおしゃべりの時間が過ぎていった。
部屋はログハウスの2階で、すごく雰囲気が良かった。壁も床も天井ももちろん木。屋根裏のような斜めの天井の下にベッド。窓際には木のテーブルとイス。昔絵本で見た森の中のおうちって、中はこんなだったんじゃないかな。思わずにんまりしてしまう。
就寝時に部屋の中のヒーターを消すことは不安だった。昼間あれだけ寒かったのだ。ここは北海道、夜は一体どれだけ寒くなるのか。いつでも着れるよう上着を枕元においてベッドに入った。
しかし。寒くなるどころかすぐに体はポカポカになり、冷え性の私があっというまに眠りに落ちた(まぁ寝つきがいいのはいつものことですが…)。そのあともヌクヌクと眠り
こけ、唯一夢の中でペダルを踏もうとして本当に脚を動かし目が覚めた以外は、朝まで快眠できたのでした。「雪国のふとんてすごいなー…」
こうして二日目の朝がやってきた。旅での時間は無駄にできない、朝食をいただいたらすぐに出発。
宿の前でみんなと旅の成功を願い合い、別れの挨拶を交わす。バイカーのお兄さんが「僕も今日は知床峠に行くんですよ」と教えてくれた。「じゃあ絶対抜かされちゃいますね(笑)」そう言って、みんなより一足先にこぎ出した。
オーナーご夫妻、ワタナベさん始めスポクラ仲間のみなさん、バイクのお兄さん、楽しい一夜をありがとう♪また北海道の大地で会いたいですね。
待て次号
「しばらく行くと黄色い旗がいっぱい立っている橋があります。そのすぐ横ですよ」
宿のおじさんの言葉だけを頼りに進む。と、まず橋、次にたくさんの旗、その脇に建物が見えた。これだ!
二階建てのログハウス、窓からは明るい光が放たれている。宿の名は「モシリバ」。
着いた…。ホッとしながら近づくと、逆光の中こちらに歩いてくる人影がある。宿のおじさん=オーナーがわざわざ出迎えてくれたのだ。
時刻は8時を回っている。こんな時間なのに笑顔で歓迎してくれて、ここでも北海道人の大きさを感じた。
「今日は(あなたたちと)同じような方がたくさんいますよ」
中に入ると、今度は宿の奥さんが笑顔で迎えてくれた。バンダナをしていて、失礼ながら白髪の髪にそれが似合ってかわいらしい。
「寒かったでしょう。先にお風呂を」
こんなに遅くなったのに、いやがられるどころかこの優しい言葉。じんわりきます。
ということで、さっそくあったまることに。
お風呂は共同で小さいのだけど、湯船に入ってびっくり!お湯の温度がドンピシャちょうどいいのです。到着時間が分単位でわかってたんじゃないかってくらい絶妙な湯加減で、これ以上熱くてもだめ、冷めてもだめ。寒風に冷え切った体をぐんぐん温めてくれる、それでもずっと入っていられるような…。「この宿すごいなー…」
風呂のあとには、夕食の感動が待ってました。
夕食は「カラフトマスのちゃんちゃん焼き」。なんとカラフトマスがまるまる一匹切り身でいただけるのですよ!そのでかいこと!写真を取り忘れたことが無念。
大きなホットプレートにマスを載せ、その周りに野菜を敷き詰め、上から特製のタレをかける。ジュジューといい音が!他にオーナーが釣った魚や、自家栽培のお野菜など、北海道の美味満載。腹ペコだった私は天国のような食事を味わった。
隣のテーブルには5人の男女がいて、とうに食事を終え楽しく談笑していた。どうやらさきほどの自転車は彼女達のもののようだ。後で聞いたところスポーツクラブで知り合った仲間とのこと。30~50才くらいに見えたけど、普段はMTBで山を走ったり、トライアスロンの選手だったりという、とてもパワフルで明るい人たちだった。
尋ねられ「自転車で来た」というと、旅の話に花が咲いた。
彼女達は、私がこれから行く方向から来たようで、「○○町に熊が出たらしい」とか「知床峠はとてもつらかった」とか「空輸は国内線ならまず大丈夫」とか、いろいろアドバイスを聞かせてもらった。すぐ横のラウンジにはバイクで旅しているお兄さんもいて、ときどき彼を巻き込みながら(お兄さんはシャイなのか口数が少なかったけど)、楽しくおしゃべりの時間が過ぎていった。
就寝時に部屋の中のヒーターを消すことは不安だった。昼間あれだけ寒かったのだ。ここは北海道、夜は一体どれだけ寒くなるのか。いつでも着れるよう上着を枕元においてベッドに入った。
しかし。寒くなるどころかすぐに体はポカポカになり、冷え性の私があっというまに眠りに落ちた(まぁ寝つきがいいのはいつものことですが…)。そのあともヌクヌクと眠り
こうして二日目の朝がやってきた。旅での時間は無駄にできない、朝食をいただいたらすぐに出発。
宿の前でみんなと旅の成功を願い合い、別れの挨拶を交わす。バイカーのお兄さんが「僕も今日は知床峠に行くんですよ」と教えてくれた。「じゃあ絶対抜かされちゃいますね(笑)」そう言って、みんなより一足先にこぎ出した。
オーナーご夫妻、ワタナベさん始めスポクラ仲間のみなさん、バイクのお兄さん、楽しい一夜をありがとう♪また北海道の大地で会いたいですね。
待て次号
衝撃的なことが起こった。
昨夜、北海道ツーリングその3を書いていたのだが、珍しくすいすい筆が進んで、いつもと雰囲気は違うけどすごくいい文章が書けた。と思った。執筆に1時間ほどを費やし(←なげーよ)、休憩を入れてたら、その間にエラーメッセージとともに消えた…。もちろん、勝手に消えたわけではなく、誤操作によるものなのだが。
すごい衝撃だった。だって、久しぶりの傑作が、楽しかった1時間が、一瞬で消えてしまったのだから。
その夜は布団で泣いた。
というわけで、本当は、「舗装の悪い道路にボコボコと体を突き上げられながらペダルを踏み、しかし完全に日が暮れ街灯のない真っ暗闇の道を落車の恐怖に怯えながら走り、なんとか海沿いの国道までたどり着いた」までの、大スペクタクル?を書いたのです。ええ、本当は、本当に。
しかし、それをもう一度1から書く気力がさすがに出ないので、その続きから始めたいと思います。正直カットしてもブログ上何も差し支えない部分ですので、読んだつもりでぜひ続きを読んでやってください。(続きもカットして差し支えない部分ですが…)では気を取り直して!
考えは少し甘かった。
さすがに国道だけあって道幅は広い。舗装もきれいだ。車もときおり通り路面を照らしてくれる。しかし、街灯は、相変わらずなかった。(でもね、路肩を示す矢印だけはちゃんと設置してあるんですよ。さすが雪国。)
なおも真っ暗闇の中を、自転車のライトだけを頼りに進まねばならない。しかも、知らない場所で初めての宿を探すのだ。
国道に出た当初は安堵していたものの、だんだん不安な気持ちになってきた。本当に着くのか…?
地図によると道路沿いに2kmほど行けば宿が現れる。そろそろ2kmだと思うのだがそれらしき宿どころか、灯り一つ見えない。というか、人の暮らす気配がまったくない。きっと左側はずっと森か牧場なのだろう。もちろん右は海。サイクルコンピュータはあるが、国道に出た時点での距離を見ていなかった。2kmを超えたのかは、もはやわからない。
いやな想像が膨らむ。
地図を見た限りでは宿は道路に面しているけど、実は道路からちょっと離れたところにあったらどうしよう。縮尺の関係でそんなことはざらにある。
宿の灯りが森に遮られて、国道まで届いていないのでは…。そうなら道路に看板やわき道があるだろうが、この暗闇でそれらの存在に気づくのは難しい。
そんなことを考え走っていると不安はどんどん大きくなる。さすがにおかしい、これは確実に宿を過ぎたんじゃないか。そう思ったとき、一瞬、ほんとに一瞬闇の中に光が見えた。
慌ててブレーキをかける。自転車を止めるが辺りは真っ暗。見間違いかもしれないと思いつつ、道をゆっくり戻ってみる。
と、確かに光が見える。木の向こうにぼんやり灯りがついている。ただし、宿とは思えぬような小さな灯り。常夜灯か何かかも…。と、思ったが、頼るものはこれしかない。灯りがあるということは人がその辺りに住んでいるかもしれない。そこで道を聞こう。
まっすぐ灯りに向かいたかったが木々の中を突っ切ることは不可能。仕方なくさらに国道を戻り、わき道を探す。
見つけた灯りがまた木々の間に見えなくなり、再び不安にかられ始めた頃、わき道は現れた。
わきへ入ると砂利道になったので自転車を降りる。するとすぐ横に別の灯りがあった。こちらはまぎれもなく家の窓からの灯りだ。やった、家だ!人だ!
道を尋ねようと建物に近づく。この時間なら人のいる可能性は高い。
…が、なんか妙なのだ。灯りは漏れているのに、話し声とかテレビの音とか生活音がまったく聞こえて来ないのだ。人の気配がない。
辺りは暗闇、ホラーな想像が胸をよぎる…。
これ、チャイム押して誰も出てきてくれんかったら、なんかめっちゃ怖いやん~っ。てゆうか、人じゃないものが出てきたらどうしたらいいんだ~~っ。
いやいや落ち着け。だいたい冷静に考えれば、誰か人が出てくれたとして、こんな夜更けなんて警戒するに決まってる、絶対怪しすぎる!
思いとどまって正解。答えは次の瞬間浮かんだ。
「あ、宿に聞けばいいのか」
そんなことに気づかないくらい余裕をなくしていたのだ。
電話で居場所を説明できるよう、自転車のライトで辺りを照らす。と、かなり大きくて高さのある看板がすぐ近くに浮かび上がった。「○○黒毛牛牧場…」
……おいしそう。
とっくに夕飯の予定時刻を過ぎていた私は、看板の文字に見惚れながら、携帯のボタンを押した。
待て次号。
昨夜、北海道ツーリングその3を書いていたのだが、珍しくすいすい筆が進んで、いつもと雰囲気は違うけどすごくいい文章が書けた。と思った。執筆に1時間ほどを費やし(←なげーよ)、休憩を入れてたら、その間にエラーメッセージとともに消えた…。もちろん、勝手に消えたわけではなく、誤操作によるものなのだが。
すごい衝撃だった。だって、久しぶりの傑作が、楽しかった1時間が、一瞬で消えてしまったのだから。
その夜は布団で泣いた。
というわけで、本当は、「舗装の悪い道路にボコボコと体を突き上げられながらペダルを踏み、しかし完全に日が暮れ街灯のない真っ暗闇の道を落車の恐怖に怯えながら走り、なんとか海沿いの国道までたどり着いた」までの、大スペクタクル?を書いたのです。ええ、本当は、本当に。
しかし、それをもう一度1から書く気力がさすがに出ないので、その続きから始めたいと思います。正直カットしてもブログ上何も差し支えない部分ですので、読んだつもりでぜひ続きを読んでやってください。(続きもカットして差し支えない部分ですが…)では気を取り直して!
考えは少し甘かった。
さすがに国道だけあって道幅は広い。舗装もきれいだ。車もときおり通り路面を照らしてくれる。しかし、街灯は、相変わらずなかった。(でもね、路肩を示す矢印だけはちゃんと設置してあるんですよ。さすが雪国。)
なおも真っ暗闇の中を、自転車のライトだけを頼りに進まねばならない。しかも、知らない場所で初めての宿を探すのだ。
国道に出た当初は安堵していたものの、だんだん不安な気持ちになってきた。本当に着くのか…?
地図によると道路沿いに2kmほど行けば宿が現れる。そろそろ2kmだと思うのだがそれらしき宿どころか、灯り一つ見えない。というか、人の暮らす気配がまったくない。きっと左側はずっと森か牧場なのだろう。もちろん右は海。サイクルコンピュータはあるが、国道に出た時点での距離を見ていなかった。2kmを超えたのかは、もはやわからない。
いやな想像が膨らむ。
地図を見た限りでは宿は道路に面しているけど、実は道路からちょっと離れたところにあったらどうしよう。縮尺の関係でそんなことはざらにある。
宿の灯りが森に遮られて、国道まで届いていないのでは…。そうなら道路に看板やわき道があるだろうが、この暗闇でそれらの存在に気づくのは難しい。
そんなことを考え走っていると不安はどんどん大きくなる。さすがにおかしい、これは確実に宿を過ぎたんじゃないか。そう思ったとき、一瞬、ほんとに一瞬闇の中に光が見えた。
慌ててブレーキをかける。自転車を止めるが辺りは真っ暗。見間違いかもしれないと思いつつ、道をゆっくり戻ってみる。
と、確かに光が見える。木の向こうにぼんやり灯りがついている。ただし、宿とは思えぬような小さな灯り。常夜灯か何かかも…。と、思ったが、頼るものはこれしかない。灯りがあるということは人がその辺りに住んでいるかもしれない。そこで道を聞こう。
まっすぐ灯りに向かいたかったが木々の中を突っ切ることは不可能。仕方なくさらに国道を戻り、わき道を探す。
見つけた灯りがまた木々の間に見えなくなり、再び不安にかられ始めた頃、わき道は現れた。
わきへ入ると砂利道になったので自転車を降りる。するとすぐ横に別の灯りがあった。こちらはまぎれもなく家の窓からの灯りだ。やった、家だ!人だ!
道を尋ねようと建物に近づく。この時間なら人のいる可能性は高い。
…が、なんか妙なのだ。灯りは漏れているのに、話し声とかテレビの音とか生活音がまったく聞こえて来ないのだ。人の気配がない。
辺りは暗闇、ホラーな想像が胸をよぎる…。
これ、チャイム押して誰も出てきてくれんかったら、なんかめっちゃ怖いやん~っ。てゆうか、人じゃないものが出てきたらどうしたらいいんだ~~っ。
いやいや落ち着け。だいたい冷静に考えれば、誰か人が出てくれたとして、こんな夜更けなんて警戒するに決まってる、絶対怪しすぎる!
思いとどまって正解。答えは次の瞬間浮かんだ。
「あ、宿に聞けばいいのか」
そんなことに気づかないくらい余裕をなくしていたのだ。
電話で居場所を説明できるよう、自転車のライトで辺りを照らす。と、かなり大きくて高さのある看板がすぐ近くに浮かび上がった。「○○黒毛牛牧場…」
……おいしそう。
とっくに夕飯の予定時刻を過ぎていた私は、看板の文字に見惚れながら、携帯のボタンを押した。
待て次号。